農業界が直面する温暖化問題 解決のカギは「カーボン・ニュートラル」

モンサント・カンパニーは、温室効果ガスを増加させない「カーボン・ニュートラル」な農作物生産システムを、2021年までに構築するという公約を掲げています。地球温暖化をはじめとした気候変動に歯止めをかけるためです。

意外かもしれませんが、温室効果ガス排出に占める農林業の割合は、世界の産業全体の約4分の1を占めます。このため農業界での温暖化対策は非常に重要です。

土壌、肥料、水田からも発生する温室効果ガス

「カーボン」は炭素、「ニュートラル」は中立を意味し、「カーボン・ニュートラル」とは、資源のサイクルの中で二酸化炭素(CO₂)の排出量と吸収量が同じになることを言います。事業活動によって排出されるCO₂と同じ量を、他の場所で削減・吸収することで実質的に相殺(オフセット)する取り組みも、カーボン・ニュートラルのひとつです。温暖化が懸念される昨今、世界中で注目される概念で、日本でも環境省が制度を整備して推進しています。

CO₂に限らず「温室効果ガス」というと、化石燃料を使う発電所や工場から排出されるイメージが強いかもしれません。しかし、部門別の温室効果ガスを排出する割合を世界全体で見ると、「電気」の25%に次いで「農林業・土地利用」が24%を占めます(IPCC:気候変動に関する政府間パネル調査)。「工業」(21%)や「輸送」(14%)よりも大きい数字です。

農業からの温室効果ガスの要因としては、家畜の呼吸、土を耕すことによる土壌中の炭素や窒素の空気中への排出があります。窒素肥料を使うことによっても、強力な温室効果ガスである窒素ガスが発生します。さらに、水田からはメタンが発生します。

また、温暖化が進むと、これまで農地として利用されていた土地での農作物の栽培が、高温や干ばつ、水不足で難しくなったり、海面上昇によって土壌の塩類化が進み、農地が減少したりするという問題も予想されています。温暖化は農業が直面する最大の問題と言っても過言ではありません。

モンサントは、これを踏まえ、カーボン・ニュートラル(温室効果ガスを増加させない)な作物生産システムを構築することで、この問題を解決しようとしています。

システム構築に向け、中心となるのはデータサイエンスと育種技術

モンサントは、品種改良を用いた種子や農薬の開発、さらにデータサイエンスを使った精密農業や不耕起栽培といった栽培方法の研究も進めており、農作物の生産工程においてCO₂を排出させないことを目指しています。

カーボン・ニュートラルな作物生産システムの構築でまず中心となるのは、育種やバイオテクノロジー(遺伝子組換え技術)を使った品種改良です。品種改良で収量を高めることで、単位面積あたりの植物による炭素吸収量を増やします。

また、遺伝子組換えの除草剤耐性作物によって、耕さなくても雑草防除が可能になったことで、土を耕さない「不耕起栽培」が普及し、耕した時に土の中から発生する炭素を減らしたり、耕すためのトラクターからのガスを抑えたりすることができます。

収穫後は、作物の一部を農地に残すことで炭素を土壌に蓄積させます。休閑期には、土壌の荒廃を防ぎつつ炭素の吸収もできる「カバークロップ(被覆作物)」を栽培して、次期に備えます。こうして、カーボン・ニュートラルな作物生産のサイクルを回していきます。

さらに重要なのが、データサイエンスです。モンサントは社外のデータサイエンス専門家と協働してシステムのモデルを開発しています。農地の肥沃度や気象データなどを継続的に収集し、これらを融合させて活用することで温室効果ガス発生要因である無駄な窒素肥料等の投入を減らすことが可能になります。こうしたデータや成功例は関係者と共有しています。

米国では、こうしたカーボン・ニュートラルな作物生産システムを大豆とトウモロコシの生産に採用することで、年間1億トンのCO₂排出削減が可能になるとされています。これは、年間2億3300万バレルの石油の消費を削減するのと同等です。

システムを実際に利用するのは、農業生産者です。生産者の関心を高めるために、成功例を示していくことや、システム導入が生産者の利益につながる仕組みを構築していくことも必要となってきます。

最新記事