米国の農家が大切にしていること

みなさんは米国の農業と聞いてどのようなイメージを持ちますか?「大規模で機械的」であったり「企業的で大量生産」といったところでしょうか?少なくとも日本の農業との共通点を思い浮かべる人はあまり多くはいないと思います。しかし、米国と日本における農家の人口は、それぞれ約200万人とほぼ同じ。意外に思えるかもしれないのが、大規模農業が主流の米国農家も、やはり農業の基盤は、日本と同じ「家族」というのが見えてくるところです。

日本の農業は99%が家族経営ですが、米国も97%とほぼ日本と変わりません。そして同じ農地を4世代、5世代にわたって受け継ぎながら農業を営んでいる家族も少なくありません。ただし、同じ家族経営でありながら、米国農業の場合、1農家あたりの農地が170ヘクタールに対して日本の場合は2ヘクタール強程度と規模が大きく異なります。このことが、米国の農業は「大規模で機械的」といったイメージが定着している理由かもしれません。

これだけの規模で何世代にも渡って農業を続ける上で、米国の農家が最も大切にしているのが「健全な農地」の継承です。以下、これまでとは違った米国農業の一面が垣間見れるレポートをご紹介します。

2010年農林業センサスおよびUSDA/NASS

 

安全な農作物を作り続けるために欠かせない「健全な農地」

農業は単なる仕事では語れません。日の出前の起床、トラクター内での昼食、真夜中まで続く収穫、長時間に及ぶ機械の修理などの繰り返しが50年間続くことも珍しくない重労働です。また財産、設備管理、さらには取引業者や銀行等との関係構築のために数十年費やすことも。

同じことの繰り返しに見える農業も、実は複雑な任務の積み重ねがあります。彼らを突き進める原動力となっているのは、米国そして世界の食糧供給を担っていることへの誇りです。だからこそ、安全な農作物を何世代にわたって作り続けることに欠かせない「健全な農地」を、親から子へ受け継いでいくことに細心の注意を払っています。

 

親から子へ受け継がれる「健全な農地」

19世紀から4世代に渡って米国サウスダコタ州にて農業家族経営を続けるボーンズ家を例にとると、米国の生産者は所有農地の継承についてよく話し合うことがあるといいます。土壌、水質や生物多様性までを一環して改善するよう努め、農地を資産として大切に扱う。代々伝わる農地の改善法は、その年の収益を考える以前に、長期的視野からも、農業を営む上での根幹となっているとボーンズ氏は言います。

一見すると均一な土地が果てしなく続いているようにみえる米国の広大な農地でも、土壌や気象条件、そして栽培方法などが多種多様であることが知られています。このことから、200万人の農家全員が参考に出来る形式化された農場継承モデルがあるわけではありません。しかし、次の世代に「健全な農地」を受け渡すため、それぞれの農家に見合った継承計画を策定することは、農業経営では最重要課題の1つといえます。すでに多くの米国農家は、歴代より蓄積された経験や知識を継承計画を練りこみ、将来を見据えています。
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「健全な農地」を守る方法とは

近年の米国農業では、農薬や肥料などの農業資材を必要なときに必要な量だけ使うことをサポートする精密農業の普及が進んでいます。さらに、米国の農家は科学技術を積極的に取り入れることによって、「健全な農地」を守る取り組みを続けています。例えば、より環境中への残留性が低く、特定の害虫だけに効果のある農薬であったり、農薬や灌漑の使用量を抑えられる遺伝子組換え作物を使うことで、農地の環境を守りながら持続可能な農業の実現を目指しています。また、これらの技術の進化は継承計画を簡素化するのにも役立っており、次世代に明るい未来をもたらします。

米国に限らず家族経営農家の実態を見ると、農地の継承という世界共通の課題が見えてきます。それぞれの国や農家ごとに事情が異なり、ひとつの解決策がすべてに当てはまるわけではありません。今回ご紹介したように科学技術を積極的に取り入れながら健全な農地を継承していく米国農家もあれば、従来の農法を守りながら継承していく農家もあります。いずれにしても、それぞれの農家がこれまで蓄積した知恵を盾に、今後も「健全な農地」を代々受け継いでいくことを切に願います。

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