ラウンドアップの疑問にお答えします。 脇森部長のラウンドアップ除草剤講座(後編)

脇森部長のラウンドアップ除草剤講座(前半)はこちらから。

 モンサント・カンパニーが展開するラウンドアップ®除草剤、その疑問に詳しく解説する脇森部長のラウンドアップ®除草剤講座の第2回目です。

 前回の記事では、人間や動物には無害で植物だけを枯らすそのメカニズムや、ラウンドアップ®除草剤によって環境保全型の不耕起栽培が普及したこと、枯葉剤との関係などについて解説しました。

 今回はラウンドアップ®除草剤が抱える問題や、その現状などについてご紹介します。

世界におけるラウンドアップ®除草剤

Q7 ラウンドアップ®除草剤は日本でどのように使われているの?

 ラウンドアップ®除草剤を国内で販売している日産化学工業株式会社のホームページに掲載された、ラウンドアップ®除草剤の適用覧を見ていただくと、果樹類からイネ、麦、大豆に野菜、樹木に牧草とあらゆる作物に対応しています。

日産化学工業株式会社 ラウンドアップマックスロード 適用表
http://www.roundupjp.com/maxroad/registration/

 私が入社したのは、ラウンドアップ®除草剤が日本で登録された1980年頃ですが、そのころはミカンと水田の耕起前や畦畔の除草程度にしか適用されていませんでした。それが、今日のように多くの作物に適用されるようになったのは、日本の土地で実際に使用した全国の農業生産者や農業技術者をはじめとする関係者の皆さんから、「こういった使い方が出来るのではないか」「こういう場面で使いたい」と、たくさんの声により支持され使用場面の開発ができたからです。

 しかし最近になって、SNSなどの普及によりラウンドアップ®除草剤についてのさまざまな間違った情報がささやかれるようになり、多くの農家の皆さんにご心配をおかけしていることは大変残念に思っています。

Q8 SNSなどで、海外ではラウンドアップ®除草剤が規制されているという情報を見かけるが、実際のところはどうなの?

 現在、ラウンドアップ®除草剤の使用が禁止されているのはスリランカだけです。これは、スリランカの稲作農家に慢性腎臓炎患者が多いことが問題となり、原因が特定されないまま農薬に起因するものだという意見が政治的に強くなり、一番多く使用されていたラウンドアップ®除草剤が禁止されたという事情があります。

 また、2015年に国際がん研究機関(IARC)によりグリホサートが発がん性のカテゴリー2Aに分類されたことをきっかけに、ヨーロッパでも「危険な可能性があるなら、使用しないほうがいいのではないか」と、規制を呼び掛ける運動が展開され、規制法案も審議されましたが、実際に使用禁止になった国はなく、農業とは関係のない公共の場所での利用を念のため控えるといった動きにとどまります。

 2016年6月には、ラウンドアップ®除草剤の有効成分であるグリホサート登録の再承認をめぐる投票がEUで行われました。投票の結果、大多数の20か国が賛成しましたが、ドイツ、ポルトガルなどが投票を棄権したため投票が成立しませんでした。しかし、欧州委員会の主導で18か月の登録延長が認められました。

 ポルトガルの団体が、人体からラウンドアップ®除草剤を検出する調査をしたところ、すべての人の体内に高いレベルで存在したという記事を発表したり、カリフォルニアワインすべてからグリホサートが検出されたという記事もでました。

 分析技術が発達し極微量でも検出できるようになった現在では、尿中などから検出される可能性は大いにありえることなのです。ドイツでは「ビールにグリホサートが含まれている」と騒がれたこともありましたが、大麦にもラウンドアップ®除草剤が使用されているので、ビールから検出されるのはおかしなことではありません。しかし、その量は極めて低いもので、安全性が確認されている残留量よりかなり低く、検出されたからといって危険であるということではないのです。

 アメリカの母親たちの間で、母乳からグリホサートが検出されたという話が出たこともありました。分析してみると、尿からは検出されましたが、母乳からは検出されませんでした。グリホサートは水溶性のため、汗や尿と一緒に排出され、体内に蓄積することはありません。

ラウンドアップ®除草剤の発がん性を巡るさまざまな見解

Q9 発がん性を巡っては、国際がん研究機関(IARC)が2015年3月に除草剤グリホサートがグループ2A「probably carcinogenic to humans(おそらく、ヒトに対して発がん性がある)」に分類したと発表した。一方で、2016年5月、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)が「食を通じてグリホサートがヒトに対して発がん性のリスクとなるとは考えにくい」と発表している。なぜ評価が分かれているの?

 JMPRは、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)が共同で、農薬の残留基準値を決めるため1963年に発足した国際機関です。各国の政府が登録に使うデータを基に、残留性や毒性などを比べ、残留基準値を決めていきます。一方のIARCは、1960年代にできたWHOの外部機関で、がんのメカニズムや発がん性リスクなどの調査、評価をおこなっています。

 そもそも両者の設立目的も異なりますが、IARCが主に見ているのは、発がんに関する疫学調査発がん性に関するメカニズム、動物実験、暴露に関する公表されたデータのみを評価して発がん性に関してのハザードの分類をするのに対し、JMPRは開発会社が国際的ガイドラインに沿って実施した農薬の残留、広範囲な毒性試験データを評価して食品の安全性の基準を設定するので、同じ農薬のデータでも、見ているデータの質も評価の目的も違うのです。当然、評価結果にも相違が発生します。

 ここでの大きな違いは、JMPRは「リスク(影響の起る可能性)」を評価するのに対し、IARCは物質などの「ハザード(危険性)」の判定をしている点です。

 リスク評価とは、まずハザードを見つけ、そのハザードの種類を判定し、人間がどの程度摂取するとどれだけの危険があるのか、つまり、暴露とハザードを見てリスクを判定するものです。一方、ハザードの判定は、「疫学調査や動物実験で、この薬はこれだけの毒性を持っている可能性があることがわかった。それは自分たちの分類表ではここに当たる」と、発表するだけです。

 ちなみに、IARCの分類でラウンドアップ®除草剤と同じ2Aに当たる食品は、赤身の肉、温かい飲み物などとなっています。

Q10 ラウンドアップ®除草剤耐性を持った雑草に、ラウンドアップ®除草剤はどのように対応していくの?

 雑草の防除を一つの除草剤だけに頼ると、抵抗性が生じることがあります。ラウンドアップ®除草剤も例外ではありません。

 除草剤が効かない雑草の問題は1950年代に確認され、ラウンドアップ®除草剤で効かない雑草が初めて確認されたのは1997年で、商品化から20年後のことです。現在では26種の除草剤の大半である23種で抵抗性雑草が確認されていますが、ラウンドアップ®除草剤は抵抗性が出にくい除草剤だったと言えます。他の除草剤では通常5年くらいで抵抗性雑草が確認されることが多いです。

 これを防ぐため、昔から耕起(土を掘り起こし耕す)や輪作、除草剤を組み合わせるなどの方法を利用してきました。こうした方法も含め、ラウンドアップ®除草剤の効能を損なわないよう、さまざまな工夫を施し、有効性をなるべく長く持たせたいと考えています。必要に応じて輪作を勧めることもあれば、ほかの除草剤との併用を勧めることもあります。

 最近では、ほかの除草剤との併用効果を高めるため、ラウンドアップ®除草剤以外の除草剤に耐性を持つ作物も開発しています。これをラウンドアップ®除草剤耐性作物と掛け合わせ、ラウンドアップ®除草剤と他の除草剤を一緒に散布すれば、ラウンドアップ®除草剤に抵抗性を持つ雑草を完全に防除することができます。このようにリスクを予知し、これに対応して行くことに努力が向けられるべきで、抵抗性雑草が発生したから悪い技術だ、止めてしまおうということでは農業生産現場は混乱してしまいます。

 ラウンドアップ®除草剤が使われて40年経ちますが、いまだに代わりとなる農薬はなく、働き盛りです。これからも多くの農家の方々に安心して使用していただけるよう、ラウンドアップ®除草剤はまだまだ進化を続けていきます。

写真提供:日産化学工業株式会社

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