ラウンドアップの疑問にお答えします。 脇森部長のラウンドアップ除草剤講座(前編)

 モンサント・カンパニーの主要事業のひとつである農薬事業。モンサントは、「ラウンドアップ®除草剤」ブランドを世界中で展開しています。

 では、ラウンドアップ®除草剤とはどのようなものなのでしょうか?日本でも農業生産の現場で広く活用され、身近な存在でありながら、農業生産者以外の方にはよく知られていないのが現状です。

 そこで今回は、ラウンドアップ®除草剤について知るために、そのメカニズムや特性、国内外での利用状況、安全性や規制の状況などラウンドアップ®除草剤のすべてを、日本モンサントの農薬&ラウンドアップ®除草剤のエキスパートである農薬規制環境部部長の脇森裕夫が解説します。

雑草防除効果が高く、環境にやさしいのは本当か?

農薬規制・環境部の仕事について

 日本モンサントは、日本国内でラウンドアップ®除草剤の販売を直接は行っていません。日本の農薬メーカーさんが販売しております。日本で農薬を製造・輸入・販売するためには、農薬取締法で定められた効果や安全性を含めた必要条件を満たし、農薬登録を取得することが必要です。そのために、農林水産省など、日本の規制当局とやりとりを進めるのが私の部署になります。

 ラウンドアップ®除草剤は発売から40年以上経つ製品です。その間、世界各地で試験が行われており、それらに関して新しい知見はないかと質問が来たり、規制の要求項目が増えるのにあわせて新しい試験が要求されたりします。古い農薬であっても安全性、残留性、毒性などの新しいデータ、使用方法などを最新の規制の要求にこたえられるようにして常に認可を継続しています。

 こうした過程で得られた知識に基づいて、よく寄せられる疑問や質問にお答えしていこうと思います。ラウンドアップ®除草剤について、その効果や安全性に関してより理解を深めていただけると幸いです。

Q1 日本で農薬が認可されるまでにはどんなプロセスが必要?

 農薬の認可(正式には農薬取締法による登録)は、農林水産省が窓口となっていますが、食品としての安全性はリスクを管理する立場にある厚生労働省、その諮問機関としてリスクを評価する内閣府食品安全委員会、そして環境に対する影響はリスクを評価し管理する立場にある環境省と4つの省庁が関与しています。それぞれ審議会を持ち、大学の先生など学識経験者を呼んで検討しています。日本で新しい農薬の登録が認可されるまでには申請から最低でも2年の期間がかかり、農薬は多面的に厳しく安全性が評価されているのです。

Q2 そうした厳しい安全基準もクリアしたラウンドアップ®除草剤ってどんな農薬?

 農薬というのは総称で、実際には雑草を防除する除草剤、害虫を防除する殺虫剤、病害を防除する殺菌剤などに分かれます。その中でラウンドアップ®除草剤は雑草を防除するためのものですので、除草剤です。

 除草剤には、百以上もの種類があり、ラウンドアップ®除草剤のように植物の種類を選ばず効果を出す非選択性もあれば、選択性(植物の種類によって効果があるものとないものがある)タイプもあります。また、生育している植物に散布する茎葉処理剤と、土の表面に散布して雑草が種から生えてこないようにする土壌処理剤があります。このうち、ラウンドアップ®除草剤は「非選択性」で茎葉処理剤です。

Q3 ラウンドアップ®除草剤は、遺伝子組換えの除草剤耐性作物と一緒に使うとどのようなメリットがあるの?

 ラウンドアップ®除草剤は、1970年に開発され、1974年から販売が開始されました。現在、日本を始め、米国、欧州、カナダ、オーストラリアなど世界160ヶ国以上で安全に使用されており、世界各国の規制当局がその安全性を確認しています。日本では最も多く使用されている除草剤です。販売当初は選択性のある除草剤、たとえばイネにかけても枯れないけれどほかの雑草は枯れるといったようなものが良い薬とされている時代でした。そうした中、植物の種類を選ばず枯らせるラウンドアップ®除草剤の効果的な使い方について研究が進められました。

 ラウンドアップ®除草剤は草にかけると枯らすことができますが、土に落ちると、土壌に蓄積せず、水と炭酸ガスに分解され、その効果は発揮されません。従って、作物を植える前に散布して雑草を枯らしてからすぐに作物を植えてもまったく害がなく、かつ、作物にかからないように使用すれば、あらゆる分野で雑草防除に使える除草剤だと認識されるようになったのです。土壌への蓄積性が無いため、世界の環境保護区や世界遺産の保全などにも利用されている除草剤です。日本では2011年に世界自然遺産として登録された小笠原諸島にて、環境省の認可の下ラウンドアップ®除草剤が使用されています。

 ラウンドアップ®除草剤は農耕地だけでなく非農耕地にも使用できます。具体的な使用方法としては、作物を植える前に雑草を取り除き、畑をきれいにするほかに、作物にはかからないように散布して畝間に生えている雑草を枯らす方法もあります。ただし、農作物の栽培時に使用する場合、ラウンドアップ®除草剤は先に説明したように、植物の種類を選ばず効果を発揮する非選択性除草剤なので、作物に少しでもかかると作物まで枯れてしまうので、散布時には注意が必要で、使いにくい面がありました。

 そこでモンサントは、バイオテクノロジー(遺伝子組換え技術)で「ラウンドアップ・レディー®」というラウンドアップ®除草剤に耐性を持つ(ラウンドアップ®除草剤がかかっても枯れない)作物を開発しました。このラウンドアップ・レディー®が栽培されている農場では、ラウンドアップ®除草剤を1回散布するだけで、作物は枯れずに雑草だけが枯れますので、雑草防除が確実に効率的に出来るようになったわけです。植物の種類を選ばず枯らせる非選択性の除草剤であるラウンドアップ®除草剤だからこそ、それに耐性を持つ作物を一緒に使うことで、効率的な雑草防除というメリットが得られます。農薬と種のセット販売だと、誤解されて否定的なイメージで言われることがありますが、農業生産者の悩み解消のために開発したのがまさにこのラウンドアップ・レディー®なのです。

Q4 ラウンドアップ®除草剤が開発されたことで、大きく変わった点は?

 まず、ラウンドアップ®除草剤を使用することで不耕起栽培が普及しました。不耕起栽培とは、前に栽培していた作物や春先の雑草を枯らし、そこに再び種を撒くことで、トラクターを使って畑を耕起することなく、作物を栽培する方法です。耕起しないので、土壌が風や雨などで流亡(耕作する農地から土壌と一緒に施肥養分や農薬が流亡すること)することを防ぎ、表土の損失を最小に抑えます。

 また、不耕起栽培により、雑草防除のために土を耕す必要がないことから、トラクターから排気される二酸化炭素を減らせ、更に、耕すことによって土壌中の二酸化炭素が空気中へ放出するのを防ぎ、温暖化の防止に役立ちます。

 ラウンドアップ®除草剤はヒトや環境に安全で、使いやすい除草剤だと自信を持って言うことができます。同じような効果は、ほかの除草剤では望めないでしょう。

なんでも枯らすラウンドアップ®除草剤は、本当に無害なのか?

Q5 「なんでも枯らしてしまう」なんて、毒性が強く、人体にも影響があるのでは?

 一言で毒性と言っても、何に対して毒性があるのか考える必要があります。ラウンドアップ®除草剤は非選択性ですが、これはほとんどの植物を枯らすということで、ヒトや動物に毒性を示すということとは違います。ラウンドアップ®除草剤の有効成分であるグリホサートはアミノ酸とリン酸が結合した除草剤で、劇物にも毒物にも属さないので、誰もがホームセンター等で購入できます。

 ではなぜほとんどの植物が枯れるのでしょうか。グリホサートが、植物に必要なアミノ酸をつくる「シキミ酸合成経路」(植物にしか存在しない重要な代謝経路)を阻害することで、植物はタンパク質のもとになるアミノ酸を作ることができず枯れてしまいます。これがラウンドアップ®除草剤の除草効果のメカニズムです。

 私たち人間や動物はこのシキミ酸合成経路を持っていないので、グリホサートが効果を発揮することはありません。よく「20種類の必須アミノ酸を摂取して健康に!」などという言葉を目にしますが、人間や動物は自分でアミノ酸を作ることはできず、食事などを通して野菜や肉などから摂取するしかありません。ですので、グリホサートは植物のことは枯らしますが、人や動物には安全であることが言えます。

 もちろん、物質として大量に摂取すれば体には悪いものですが、それは水を飲みすぎれば水中毒で死に至ることもある、というのと同じです。グリホサートの植物を枯らす毒性としての働きは、人や動物には働かないのです。

 最近ネット情報等で「安全なら飲めるのか」という声があったりしますが、そもそも農薬は飲むために作られたものではありません。ラウンドアップ®除草剤には有効成分のグリホサート以外に植物の体内にグリホサートを入れる助けをする石鹸の成分の界面活性剤がはいっており、石鹸は飲むために使われないのと同じ考え方です。

Q6 「ラウンドアップ®除草剤は枯葉剤で危険だ」という声を聞くけれど…。

 モンサントが米国政府の指示によって、エイジェントオレンジ(枯葉剤)と言われる除草剤を製造していた、当時の大手化学メーカー7社の中の1社であったことは事実ですが、ラウンドアップ®除草剤とエイジェントオレンジ枯葉剤の成分はまったく別物です。

 エイジェントオレンジ枯葉剤は「2,4-D」と「2,4,5-T」という薬の混合剤で、ベトナム戦争時に米軍が使用していました。研究が進み、この中に含まれるダイオキシンが健康に有害な影響をもたらしたのではないか、と言われていますがその因果関係も明確ではありません。現在、2,4-Dは農薬として安全に使用されています。ただしラウンドアップ®除草剤とは構造も効果の発揮の仕方もまったく違うものです。

ラウンドアップの疑問にお答えします。 脇森部長のラウンドアップ除草剤講座(後編)に続きます。

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