あなたの知らない遺伝子組換え技術の世界

遺伝子とDNA

遺伝子組換え技術について知る前に、まずは遺伝子やDNAについての簡単な予備知識を。遺伝子やDNAということばはよく耳にしますが、その二つの違いを答えられる方はあまり多くないかも知れません。動物や植物を含めた地球上全ての生物は、細胞からできています。この細胞の中に核があり、核の中に染色体、そして染色体はDNAで構成されています。DNAの中でタンパク質をコード(暗号化)している部分を遺伝子と呼びます。大きい順で、細胞→核→染色体→DNA→遺伝子。

人間を例でみると細胞の数は約37兆個あるといわれています。DNAは約30億対の塩基配列(アデニンA、チミンT、グアニンG、シトシンC)からできていて、遺伝子は約2~3万種類あります。遺伝子の数が意外に少ないと感じる方がいるかもしれませんが、これは一つの細胞の中にこれだけの種類の遺伝子が入っているということです。

それでは細胞は何でできているのでしょう。お聞きになったことがあるかも知れませんが、細胞は水分を除くと主にタンパク質で組み立てられています。タンパク質は、アミノ酸という分子が鎖状につながった物質です。タンパク質の素材となるアミノ酸は全部で20種類あり、それらの並び順によってタンパク質の種類が決まります。アミノ酸が数珠つなぎになった物質こそがタンパク質なのです。タンパク質の設計図となるのがDNA。正式にはデオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid)という物質で、二重らせん構造をしています。らせんの内側に、「塩基」と呼ばれる部分が並んでおり、この塩基の並び方によって様々な用途を持つタンパク質が作られています。細胞はタンパク質の製造工場なのです。

01DNA


品種改良とは

細胞内でタンパク質が作られていて、このタンパク質が生物の持つ多くの性質や特徴を決めています。これらのタンパク質をコードしている遺伝子の組み合わせを利用し、より有用な品種を作り出すこと(より目的に合ったものを選び出すこと、目的に合わないものを排除すること)を品種改良といいます。この技術は、実は人類が古くから利用してきたのもです。一般的な植物の品種改良では、「めしべ」と「おしべ」の交配による組換えで新しい品種を作ります。例えばトマトやトウモロコシなどは、異なる系統の作物どうしをかけ合わせて、様々なバラエティーを作り出し、その中から親品種よりも栽培しやすく、収穫の品質も良く、収穫量も多い品種を選抜して、作物として定着させるという方法です。

現在、私たちが日常生活で食べている穀物や野菜などの生命体のほとんどは、このような様々な交配によって遺伝子が組換わったことの成果なのです。歴史的に見ても、人間の手によって作られる「作物」というのは、品種改良を重ねた植物のことそのもの。例えばイネも、亜熱帯の植物だったものを長年かけて、寒冷地でも育つようにしたり、収穫量を増やしたりと品種改良が続けられています。栽培しやすいよう、あるいは、栄養価が高くなるようにと様々な理由で改良を重ねた植物が、「作物」なのです。私たちは、「自然のまま」の穀類や野菜類を食べていると思いがちですが、実は品種改良の恩恵を受けたものを食しているのです。

しかし、従来の品種改良の手法は新しい品種をつくるのに、長い時間と手間がかかります。なぜなら、よりよい形質をもった個体を必ず得ることができるわけではなく、偶然に頼っている部分が大きいからです。また、これらの手法で作り出された新品種では、どのような遺伝子がどのように変り、特定の形質を生みだすタンパク質がどのように変ったのかがわからない場合が多いのです。

そこで誕生したのが遺伝子組換え技術です。

 

遺伝子組換え技術とは

遺伝子組換え(バイオテクノロジー)生物は英語では「Genetically Modified Organisms」通称GMやGMOとも呼ばれています。遺伝子組換えに代表されるバイオテクノロジーは、生物学の「バイオロジー」と、技術の「テクノロジー」を合わせた言葉で、生物の持つ機能を応用する技術のことを指します。

02Soybeans


遺伝子組換え技術の発展

1953年にワトソンとクリックが、DNAの構造を明らかにして以来、遺伝子に関する研究は飛躍的に発展しました。1970年代後半には、土壌微生物の一種であるアグロバクテリウムが、自らの遺伝子の一部を植物に導入できることがわかり、このメカニズムを応用して、植物の世界で遺伝子組換え技術の研究が盛んになりました。アグロバクテリウムを「遺伝子の運び屋」として、植物に目的とする遺伝子だけを導入して、偶然に頼ることなく、確実に短期間で新たな性質を加えることが可能となったのです。また、花粉による交配が行えない他の生物の有用な遺伝資源も活用することが出来るようになり、品種改良技術はその可能性が大きく広がりました。

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バイオテクノロジーは
未来へのカギ

バイオテクノロジーは現在、さまざまな分野で最先端技術としてすでに用いられています。 例えば農業分野では新たな品種の開発や、作物の効率的生産などに貢献しています。害虫抵抗性、乾燥耐性、高収量作物などの開発をもって、世界人口の増加に伴う将来到来すると予見される食糧危機という課題に対応しています。

農業分野以外にも遺伝子組換え技術が既に実用化されている例として、ヒトの医薬品としてのインターフェロンやインスリン、さらに動物用医薬品や飼料に添加するアミノ酸などがあります。私たちの暮らしに身近な例としては衣料用洗剤の酵素などもそうで、既に活用されているものが多くあります。

環境分野でも生分解性プラスチックや、汚染物質を分解する微生物などが実用化されるなど、21世紀に人類が抱える様々な環境問題を解決するカギを握る技術として注目されています。

もちろん遺伝子組換え技術が全ての解決策とは言いません。しかし今後人類が直面する様々な課題に立ち向かうための選択肢として重要な技術の一つであることは間違いありません。

出典: バイテク情報普及会 公式サイト

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