【FOODS NEXT第3回】食生活の変化で何が起きたのか?日本の国土利用から読み解く食料事情。

※主な輸入農産物の生産に必要な農地面積1,200万haの内訳:小麦242万ha、大豆199万ha、とうもろこし215万ha、菜種、大麦等242万ha、畜産物(飼料穀物換算)250万ha(各作物輸入量を輸入先国の短集でそれぞれ割って算出:農林水産省下記資料より)

私たちが日頃食べている食事。実は、戦後を境に大きく変化していることはご存知でしょうか。

戦後、復興を目指した日本は、高度経済成長を迎えたことから急激に生活が豊かになり始めます。それまで日本は食料の供給も難しい状況でしたが、スーパーマーケットやコンビニ、ファストフード店の発展によりいつでも好きな食事が楽しめる環境になりました。その結果、それまで日本の食生活の中心はコメでしたが、次第に肉や油が使用されているおかずに移り変わっていったのです。

こうした食環境の変化は、自給率にも影響を及ぼすようになります。コメは国内で十分に生産ができますが、畜産物や油脂類の需要は急増し、国内の生産量だけでは十分にまかなうことができなくなります。海外から輸入することではじめて現在の豊かな食生活を送ることができるのです。

では、日本国内での生産のみで今と同じ食生活を送ることは可能なのでしょうか?

自給率100%のためには何が必要?

自給率100%に必要な農地面積※主な輸入農産物の生産に必要な農地面積1,200万haの内訳:小麦242万ha、大豆199万ha、とうもろこし215万ha、菜種、大麦等242万ha、畜産物(飼料穀物換算)250万ha(各作物輸入量を輸入先国の短集でそれぞれ割って算出:農林水産省下記資料より)

図1からわかるように、トウモロコシや大豆、小麦など主な輸入農産物の現在の日本での消費量すべてを国内で生産するためには、今の日本の農地面積の約3.5倍もの農地が必要となります(*1)。では3.5倍もの農地が確保できるのでしょうか?

*1)農林水産省「今、わが国の食料事情はどうなっているのか

国土の利用状況図2からも読み取れるように、日本は国土に占める農地の割合はたった12%に留まります(*2)。農地には適さない森林が多くを占める日本で大規模に農地を増やすのは現実的には難しいことがわかります。

*2)総務省統計局「国土状況

国別農地面積の割合図3は、国別に国土を占める農地の割合を示したもの(*3)。このデータからもわかるとおり、日本は他国と比較してみても高くありません。国土のおよそ2/3(66%)が森林であり、標高500m以上の山間部が国土の1/4を占める日本では、農地を増やすことはそう容易ではなく、もともと国土面積が大きくないため、実際の農地面積が非常に小さくなります。

では、具体的な数値を見るために、日本と他国の農地面積を、2006年における日本の農家1戸当たりの農地面積1.8hをもとに比較してみましょう。米国(180.2ha)は日本のおよそ99倍、EU(16.9ha)は9倍、オーストラリア(3,423.8ha)は1,902倍。まさしく桁違いです(*4)。

広大な土地で大量生産が可能な海外と、農地だけでなく平地も少ない日本では、農地面積だけでなく、生産量も大きな差が生じているのです。

*3)国際統計格付センター「世界・陸地面積に占める農地の割合ランキング
*4)農林水産省「 (1)農業構造と農業経営の動向

日本が稲作重視の農業を行う理由。

日本と欧米諸国の農業生産品目

では、海外よりも比較的狭い農地で、日本の食生活が成り立っていた理由は一体どこにあったのでしょうか。それを探るため、海外と日本の農業生産品目を見てみましょう。

図4からわかるように、海外では牛乳やじゃがいも、小麦を生産している一方で、日本では水稲を多く生産しています(*5)。その背景には、日本の限られた農地と水稲を育てることの相性が良かった点が大きく関わっていました。

ヨーロッパや米国を中心に作られている小麦は水稲と異なり、同じ畑で農業を繰り返し行うと生産量が著しく落ちるという欠点がありました。その土地にある栄養などが少しずつ失われることから、分割した農地を代わる代わる使って土地を休ませる必要があったのです。このような点からも、農地が限られた日本で小麦を育てることは難しい面があります。

しかし、水田で稲を栽培する際に使用する水には多くの栄養分が含まれていること、定期的に行う水の入れ替えから過剰になった栄養分を洗い流せることから水田では繰り返し農業を行うことが可能です。

そして水稲は小麦よりも単位面積当たりの収穫量が多いため、比較的狭い農地で効率よく食料が生産できたことも日本の環境に適していました。日本は膨大な土地がなかったとしても、小麦ではなくコメを主食とすることで、わずかな土地で食料生産を効率よく行ってきたのです(*6)。

*5)21世紀政策研究所「成熟先進国型農業国と日本の農業生産品目
*6)近畿農政局 整備部「なぜ日本は水田を求めたのか」/21世紀制作研究所「新しい農業ビジネスを求めて

豊かな食卓のためには、輸入作物が必要。

豊かな食卓ところが、近代は生活が大きく変化し、食生活の中心がコメから小麦、肉などに移り変わった日本。かつてはコメで日本の食生活は潤っていましたが、食生活に畜産品が加わったことで、その飼料となる農作物をも海外から輸入することが求められるようになりました。

自給率向上の必要性が言われる一方で、なぜ輸入穀物が必要なのか?狭い国土に限りある農地と、今ある豊かな食生活の維持、そのバランスを考えてみると答えが見えてくるような気がします。

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