【FOODS NEXT第2回】牛丼、味噌汁……身近な食べ物から食料問題を考える

 

昨日の夜、あなたは何を食べましたか?

どこかお気に入りのお店でラーメンや牛丼、ハンバーガーを食べた人も少なくないはず。しかし、私たちが普段口にしている、こうした料理の数々は、いつまでも気軽に食べられるとは限りません。

その理由には、日本の食料自給率が大きく関わっています。世界的に見ても日本の食料自給率は低く、半分以上の食料を海外から輸入しているのが現状です。

現在の私たちの豊かな食生活は、どのように成り立っているのでしょうか。その答えを探っていくと、今、世界が直面している課題が見えてきました。

牛丼、ラーメンはほとんど輸入作物を原料に作られている

食料自給率が低い日本の食事は、海外からの輸入によって成り立っています。実際にどのくらい輸入に頼っているのか。多くの人にとって馴染み深い、牛丼と味噌汁に使われている食材の自給率を見てみましょう。

牛丼にみる食料自給率※醤油の数値は“推定”

農林水産省によると、コメの自給率が98%(*1)なのに対し、牛丼の主役ともいえる牛肉の自給率は40%(*2)。家畜を育てるうえで必要な餌(飼料)も海外からの輸入がほとんどのため、飼料の自給率まで考慮すると、牛肉の自給率は11%(*3)まで下がります。国産だけでまかなおうとすると、価格も現在の何倍も高くなる可能性があるのです。

そして牛丼を作る際に使う食用油の原料となる大豆やナタネは、ほぼ100%が輸入。味付けに使われている醤油の原材料となる大豆も、ほとんどを海外からの輸入に頼っています(*4)。

*1)*2)*3)資料:農林水産省「総合食料自給率(カロリー・生産額)、品目別自給率等
*4)資料:しょうゆ情報センター「しょうゆ統計資料 平成29年版」※大豆と小麦の自給率より算出(推定)

味噌汁にみる食料自給率※各数値は“推定”

牛丼とセットで提供されることも多い味噌汁も、食料自給率という観点から見ると安心はできません。

具材となる豆腐と油揚げの自給率はそれぞれ18%(*5)。さらに、味噌汁の味の決め手となる味噌の自給率は10%。大豆はそれぞれの原材料となっていますが、実は純国産のものはほとんどないのです。味噌汁は和食には欠かせない定番のメニューであるはずが、輸入された食材で作られているのです(*6)。

*5)資料:日本豆腐協会「豆腐について
*6)資料:全国味噌工業協同組合連合会「食品用大豆の用途別使用量

牛肉や豚肉が食べられるのも、飼料の輸入があってこそ。

牛肉や豚肉

今、日本では問題なく牛丼も味噌汁も食べられます。しかし、そんな現状がいつまでも続くとは限りません。輸入先の国で作物の収穫が不足すれば自国の分がまず優先されるので、輸出量が減る可能性があります。また、現在の輸出先国以外の国に輸出が増加すれば、日本への輸出量が減る可能性もあります。

仮にすべての輸入作物が無かったとしたら、国内で生産した食料だけで食生活を維持する必要があります。必要なカロリーを摂るだけなら国産のものだけでもまかなえるかもしれません。ただし、食事の内容が大きく変わります。自給できるものとして、米(98%)やさつまいも(94%)、野菜(80%)がメインの質素な食事になります(*7)。肉や卵、牛乳などの畜産品を使う食事、油を使う食事、小麦粉を多く使うラーメンやうどんなどの麺類、パン類は高級料理となってしまい、通いつめた身近なお店でも簡単には買えなくなってしまうかもしれません。

日本人の食生活はこの50年で大きく変わりました。1960年頃、主なタンパク源は魚であり、白米と味噌汁、漬物が基本的な組み合わせでした。やがて東京オリンピックや大阪万博といった世界的なイベントが開かれたことをきっかけに、世界中から食料が輸入されるルートが発達。食生活が多種多様なものになっていきます。

*7)資料:農林水産省「総合食料自給率(カロリー・生産額)、品目別自給率等」、「平成27年度食料自給率

いつか、今と同じ食事ができなくなってしまうかもしれない?!

今と同じ食事は本当に続けられる?

日本では周りに食べ物があふれている状況が当たり前ですが、世界が直面している食料危機はやがて私たちの食卓に影響する可能性があります。これは単なる仮想の話ではありません。たとえば2012年には米国の干ばつで輸入トウモロコシの価格が高騰し、畜産品の飼料が不足する事態になりました。また2010年にはオーストラリアをはじめ世界各地で大干ばつによる被害が起き、重ねて大洪水とサイクロンの被害に見舞われた結果、製粉用小麦の輸出量が減少することとなりました。

日本は世界的に見ても豊かな食文化を育んできた国です。でも、それは海外からの輸入作物によって支えられているというのも事実です。10年後、50年後も同じ豊かな食生活を迎えるためにも、食料がどこから来ているのか、食料を安定的に輸入するためには何が課題なのか、身近な食事から見えてくる問題に目を向け、考えてみることが必要ではないでしょうか。

資料:農林水産省「70年に一度とも言われる米国の干ばつ
資料:『食糧危機が日本を襲う!』(柴田明夫・KADOKAWA)
資料:『食料自給率のなぜ』 (末松広行・扶桑社新書)

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